院長ブログ3:新型コロナワクチン接種後皮膚障害について

10月1日から、65歳以上の高齢者や60~64歳で重度の基礎疾患がある方を対象に、新型コロナワクチンの定期接種が始まります。それ以外の方も任意接種として、費用を全額負担すれば接種を受けることができます。今回接種可能なワクチンは以下の5種類です。

企業名ファイザーモデルナ第一三共武田薬品工業MeijiSeikaファルマ
販売名コミナティスパイクバックスダイチロナヌバキソビットコスタイベ
抗原株JN.1株JN.1株JN.1株JN.1株JN.1株
ワクチンのタイプmRNAmRNAmRNA組み換えタンパクmRNA(レプリコン)

2020年に始まった新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック以来、新型コロナウイルス感染による皮膚障害だけでなく、新型コロナワクチン接種に関連したと考えられる皮膚障害が、世界中から何百報も報告されています(Int. J. Dermatol 61: 1187, 2022)。私も新型コロナワクチン接種後10日程度で帯状疱疹にかかる人が多いことに気づき、おそらく日本で初めて症例報告を行いました (J Dermatol 49: e151, 2022)。したがって、因果関係までは科学的に実証できないとしても、今後皮膚症状を診る際に、新型コロナワクチン接種歴の影響を考慮する必要があると考えます。新患、再診を問わず、新型コロナワクチンの接種歴をお聞きすることがあると思いますので、ご協力お願いいたします。

今回の接種に用いられるワクチンは、表に示しましたように、全てJN.1株をもとに製造されたものです。JN.1株は現在主流となっているKP.3株の親株に相当し、少し前に流行した株です。コロナウイルスは非常に変異が速いことが知られているので、これから流行るかもしれない株に対する今回のワクチンの効果は未知数です。

また、mRNAが体内で自己増殖できるようにすることによって、接種するmRNA量が少なくて済むことが特徴のレプリコン・ワクチンですが、今のところ承認されたのは日本だけで、いろいろな方面から安全性に対する懸念の声が上がっています。私はワクチン開発とは全く関係ありませんが、自分でmRNAを合成し、それを使って実験をしていたことがあります。その経験からいうと、あくまで個人的な見解ですが、レプリコン・ワクチンはmRNAをたくさん合成する(アクセルを踏む)仕組みはありますが、合成をストップさせる(ブレーキをかける)仕組みは不十分だと思います。

以上のことから、個人的にはあわてて接種せず、しばらく様子見がいいのではないかと思います。ただし、当クリニックは、新型コロナワクチン接種歴の有無をもって患者さんを選別することはしません。むしろ、接種後に皮膚症状が出たり、これまでの皮膚症状が悪化した場合は、積極的にご相談下さい。