診療Update3: 重症花粉症対策

季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の重症度は、「軽症」「中等症」「重症」「最重症」に分けられ、「鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症- 2020年版」では、「くしゃみまたは鼻をかむ回数が1日11回以上」、または「鼻づまりの程度が強く、1日のうちかなりの時間を口呼吸で過ごしている」という方は、「重症」と分類されます。

当クリニックでは、“既存治療で効果不十分”な重症・最重症の季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の方に対して、生物学的製剤オマリズマブ(ゾレア®による治療を行っています。花粉症をはじめ、さまざまなアレルギー疾患には、IgEという免疫グロブリンが関わっています。IgEが肥満細胞(マスト細胞)と呼ばれる免疫細胞の表面にある受容体に結合すると、ヒスタミンやロイコトリエンといった物質が放出されてアレルギー症状を起こします。くしゃみや鼻水はヒスタミンを介した神経反射と考えられてます。

ゾレアはIgEと結合することで、IgEがマスト細胞表面の受容体に結合するのをブロックし、ヒスタミンやロイコトリエンといった物質の放出を抑え、アレルギー症状を抑えます。

https://www.okusuri.novartis.co.jp/xolair/asthma/xolair/mechanism

ゾレアによる治療を受けるためには以下の条件を満たす必要があります。

  • スギ花粉のアレルギー検査(血液検査)の結果が陽性(スギ花粉特異的IgEがクラス3以上)
  • 季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の既存治療を1週間以上行い、効果が不十分
  • 12歳以上で、血清中総IgE濃度が30〜1,500IU/mL
  • 体重が20〜150kgの範囲にある

ゾレアの投与量・投与間隔は、初回投与前の血清中総IgE濃度および体重に基づいて決定され、薬剤費も変わってきます。詳しくは以下をご覧ください。

ゾレアの薬剤費 | 季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)でお悩みの患者さまとご家族の方へ | ゾレア®による治療を受ける患者さんとそのご家族の方へ
ゾレアの薬剤費は、1ヵ月の投与量により異なります。窓口でのゾレア皮下注シリンジの薬剤費は、高額療養費制度の適応となるため、自己負担額は年齢・収入によって異なります。本サイトは、ノバルティスファーマ株式会社が運営しています。

一方、スギ花粉症、ダニアレルギーをお持ちの方は、舌下免疫療法も可能です。舌下免疫療法とは、アレルギーの原因となっているアレルゲンを、毎日「舌の下」に投与していくことで、少しずつ体をアレルゲンに慣らしていき、症状を和らげ、根本的な体質改善を目指すことができる治療です。治療期間は2年以上、3〜5年が推奨されています。

ただし、スギ花粉症の舌下免疫療法の希望者数がメーカーの想定を大幅に上回る状況が続いているため、スギ花粉舌下錠の出荷調整が行われており、現在スギ花粉の舌下免疫療法は開始しにくくなっています。

そこで、当クリニックではスギ花粉症の方に対し、ダニに対する舌下免疫療法を行っています。スギ花粉症なのにどうしてダニ?と思われるかもしれません。最近の研究では、スギ花粉やダニの舌下免疫療法行うと、スギやダニだけでなく、他のアレルギーの症状も軽くなることが報告されています。

スギ花粉症については、アレルギー性鼻炎症状を持つ患者383人にダニの舌下免疫療法を行ったところ、重度のアレルギー性鼻炎症状を持つ患者の割合は、ベースライン時の46.4%から4年後には1.0%に減少したことが報告されています(Immunotherapy 15:1401, 2023)。

ダニの舌下免疫療法は季節に関係なくいつでも開始することができます。ご興味のあることはご相談下さい。