アトピー性皮膚炎
2024.04.03
アトピー性皮膚炎とは?
- アトピー性皮膚炎は日本皮膚科学会の診療ガイドラインでは次のように定義されています。
- 「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰返す、そう痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」。簡単に言うと、かゆみを伴う湿疹が悪くなったり良くなったりをくりかえす皮膚の病気です。乳児では2ヶ月以上、その他の年齢では6ヶ月以上慢性的な湿疹を繰り返す人が該当します。
- アトピー素因とは、自身や家族が気管支喘息やアレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のいずれか、ないしは複数にかかったことがあることをいいます。
- 日本人では、フィラグリンという皮膚のバリア機能の不可欠な遺伝子の異常がアトピー性皮膚炎の患者の約3割に見つかると言われています。
典型的な皮疹
- アトピー性皮膚炎の皮疹は左右対称性に現れます。
- 軽症では、皮膚が赤くなりカサカサして乾燥している状態(紅斑、鱗屑)だけですが、症状が重くなってくると、ブツブツ盛り上がった状態(丘疹、痒疹)、腫れてジクジクした状態(浸潤)、皮膚が硬くゴワゴワした状態(苔癬化)がいろいろな程度に混ざって現れてきます。
- 好発部位は額、眼や口の周り、唇、耳の周り、首、肘、膝、体幹です。年齢による特徴があり、乳児期~幼児期は、頭や顔にまずジクジクした湿疹が現れ、だんだん下に降りていく傾向があります。幼小児期~学童期は、乾燥が強くなり、肘や膝裏など関節の屈曲部に、湿疹が強く現れます。思春期以降は、上半身に病勢がつよい傾向がありますが、皮疹が全身に及ぶこと(紅皮症)もあります。
当院での治療
- 日本皮膚科学会の診療ガイドラインでは、治療の目標は「症状はないか、あっても軽く、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない」状態と設定されています。
- アトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚のバリア機能が低下していることが多いので、まずバリア機能を回復・維持させるために不可欠な外用がしっかりできているか確認します。外用薬の種類、量、塗り方が適切かどうか確認します。外用は保湿材とステロイド軟膏が基本となりますが、そのほかに作用機序の異なるタクロリムス軟膏(プロトピック®)やデルゴシチニブ軟膏(コレクチム®)、ジファミラスト軟膏(モイゼルト®)を組み合わせて使用します。
- 外用治療ではよい皮膚の状態を維持できない重症の患者さんには、医療費は高額とはなりますが、皮下注射薬や、JAK阻害薬という内服薬による新しい治療法をお勧めします。皮下注射薬にはデュピルマブ(デュピクセント®)とネモリズマブ(ミチーガ®)、トラロキヌマブ(アドトラーザ ®)、レブリキズマブ(イブグリース®)が、JAK阻害薬にはバリシチニブ(オルミエント®)、ウパダシチニブ(リンヴォック®)、アブロシチニブ(サイバインコ®)があります。いずれも、アトピー性皮膚炎の病態、かゆみに関わるサイトカインという物質によるシグナル伝達経路を阻害するお薬です。当院ではいずれも使用可能です。